柿吊るさざれば、鹿路人に非ず。

2002.秋

カキ 鹿路、特に断言できるのは、この時季、越道で軒先に柿を吊るしていない家はありません。なぜかみんな、命を賭けちょる。まさに柿を吊るして無い家はもぐり、と、イワンばかりです。
我家も例外なく吊るしています。剥いた皮は一夜漬け、例えばハクサイの、一夜漬けを作る時に一緒に付け込んだら風味が増します。甘さも、柿本来の甘さが移って、おつに仕上がりませう。昔から和菓子の甘さは柿の甘さを超えてはならないって言いますが、それを実感します。



剥く時に熟しすぎたものは、そのままほたっといてジュクジュクにしちゃいませう。そのじゅくじゅくだけをソースにして、例えばとり肉を炒めたり煮込んだりすれはば、もう、それはプロバンス風ですよ。
ところで、脊振村に移住して気付いたんですが、渋柿を収穫するのは「柿狩り」じゃなく「柿ちぎり」。そして渋柿をむいて吊るしたのは「吊るし柿」で、それが乾燥したら、つまり干上ったら「干し柿」に名前を変えます

カキ 福岡ではみんな、製品になってるんで、干し柿と呼んでなんの違和感もなかったんですが、生産の現場に移住すると、まるで柿も出世魚ばり。当たり前のことなんですが、この当たり前が、移民者には嬉しか。なんかホントの村民になれたごたたるんで…。ささやかな幸せを感じる、今日このごろです。実に安上がりな幸せです。
さて吊るし柿ですが、ちぎったら一日ほど日陰に置きます。こうする事で皮と実の分離をよくします。ただ、買ってきた渋柿は一刻も早く剥く事。すでに充分、分離しているからです。剥いたらヒモに吊るし、鍋にお湯を湧かしてひもごと柿全体を2,3秒、熱湯にくぐらせます。これはカビの発生を押さえ、きれいに仕上げるためです。硫黄で燻す方法もありますが、我家は仕上がりでの硫黄の香り

カキ がちょびっと気になるんで、熱湯派です。
 吊るすのは軒先。ここてで大切なのは、干すためには、太陽と風が欠かせない、という事。どちらが欠けても、うまくいきませぬで。
 いっぱいに吊るした吊るし柿を、村では柿のれん、と呼んでいます。酔い響きですね。うほほほん、これだけで一杯飲めます。




山ウドの花です。これもテンプラがうまか!! これが終わるころ、主役は柿へと移ります。



たわわに実った渋柿、去年はダメだったのに、今年は裏年で豊作です。



栗はぜんぜんダメでした。台風の影響で、実をつける枝が折れてしまったからです。



まずは普通の平均的な吊るし柿。これでも平均的です。


ちょっと根性が入ると、こうなります。鉄の骨でできたこの小屋は、あちこちにあって、柿吊るしの専用小屋です。



風情を求めると、こうなります。